「AIを使えば、自分でもアプリを作れるんじゃないか?」
始まりは、「AIでアプリを作ってみたい」という好奇心でした。
せっかくなら仕事に関係するものを、と選んだのが経費精算アプリです。
正直、業務改善と同じくらい、「AIでアプリを作ったと言ってみたい気持ち」もありました(笑)
先に言っておきます。
私はプログラミングができません。
経費精算の仕事は分かる。
プログラムは分からない。
でも、今はAIがある。
分からないことはChatGPTに相談し、プログラム作りもAIに手伝ってもらう。
エラーが出たら、また直してもらえばいい。
完璧な作戦です。
少なくとも、始める前までは(笑)
<ちょっと補足 今回使ったAI>
文章の整理や相談にはChatGPT、実際のプログラム作成・修正にはOpenAIの開発支援AI「Codex」を使いました。
難しい仕組みを覚えてから始めたのではなく、分からないことをAIに聞きながら進めた形です。
【まずは大風呂敷を広げる】
作ろうとしたのは、「社員がスマートフォンやパソコンから経費を申請できるアプリ」です。
経費を入力して領収書を添付し、経理担当者が確認、経理上司が承認。
最後は会計システムへ渡すCSVデータを出力する。そんな流れを考えていました。

まだ開発を始めたばかりなのに、私は顧問税理士へ「今、経費精算システムを自作中です。完成したらお披露目します!」と宣言してしまいました。
完成の保証はないのに、風呂敷だけは立派です。
AIに業務の流れを伝えると、本当に経費入力画面が表示され、申請ボタンや承認画面まで出てきました。
まだ入口なのに、気持ちは完成披露会。
自分で作った画面が表示されると、人間はだいぶ判断が甘くなるようです。


【見た目はボタン。でも働かない】
ところが、少し手を加えると雲行きが怪しくなりました。
画面の一部を直すと別の画面が崩れる。
文字を直すとボタンが消える。
ボタンを復活させると、今度は押しても反応しない。
ボタンは確かにそこにあります。
見た目も立派です。
でも、押しても何も起こりません。
このボタンが会社員なら、上司から「少し時間いい?」と呼ばれる状態です(笑)
AIに「ほかの部分は絶対に変えないでください」と頼んでも、変えないでほしい場所が普通に変わることもありました。
どうやら、こちらのお願いは届いていないようです。
さらに、画面ができるたびに「下書き保存も欲しい」「差戻しも必要」「履歴検索も便利」と、アイデアが次々に浮かびました。
問題は、思いつく私と、それを形にしてくれるAIしかいなかったことです。
「それ、今いります?」と言ってくれる人がいません(笑)
その結果、途中からは、どこまで正常に動いていて、どこからおかしいのか、自分でもよく分からなくなりました。
本来は、最初に必要な機能を整理し、税法やセキュリティも確認するべきでした。
それに気づいた頃には、経費精算アプリはかなり形になっています。
家を建てて屋根まで載せた後に、「ところで、設計図はどこですか?」と聞いている状態です。
もちろん、ありません(苦笑)
【飲み会を断り、エラーとの週末を選ぶ】
特に苦労したのが、「エラーへの対応」です。
エラーを1つ直すと、別のエラーが2つ出る。
2つ直すと、今度は見たことのないエラーが現れる。
こちらは減らしているつもりなのに、なぜか終わりません。
最初は冷静に「このエラーを修正してください」と依頼していましたが、最後には「すべてのエラーを根絶してください!」と、かなり感情が入っていました。

その週の土曜日には、友人との飲み会が入っていました。
しかし金曜日、私は「この土日で完成させる!」と決意し、飲み会をキャンセルしました。
土曜日の朝は「遅くても夕方には終わるだろう」と思っていました。
昼になっても終わらない。夕方になっても終わらない。
そして土曜日の夜。
友人たちはビール。
私はエラー。
飲み会を断ったことを、この頃にはすでに後悔していました。
それでも日曜日も朝から作業を続け、夕方には目標が「完成させる」から「月曜日に支障が出ない時間には寝る」へ大幅に下方修正。
日曜日の夜には、完成よりも「もう寝たい」が勝っていました。
結局、エラーは完全には消えず、代わりに土日の2日間と飲み会がきれいに消えました。
そして月曜日。当然ですが、普通に仕事です。
手元に残ったのは、強烈な眠気。
そして、まだ元気に残っているエラーです。
消えた土日と飲み会代を経費精算したい気分でした。
今回のアプリでも、たぶん承認されません。
【お父さんの新しい友達「あいちゃん」】
アプリ開発について相談できる人が身近にいなかったため、一番の相談相手はChatGPTでした。
ちなみに、私はChatGPTを「あいちゃん」と呼んでいます。
AIを「あい」と読んだだけです。
命名に深い意味はありません。
機能の相談も、エラー対応も、デザインの迷いも、全部あいちゃん。
うまく動かなければ、文句も言いました。
そんな私を見て、妻と娘たちから「お父さん、新しいお友達ができたね。AIのあいちゃん」と、ゲラゲラ笑われました。
家族団らんの時間になると、「今日は、あいちゃんいないの?」「最近、あいちゃんとは順調?」と何度もいじられます。
順調ではありません。
毎日、エラーでもめています。
【ほぼ完成!……と思ったら、最後に大問題】
いろいろありましたが、経費入力、領収書の添付、申請、承認、履歴確認、会計システムへ渡すCSV出力まで、経費精算の一連の処理が動くところまで来ました。
ここまで来ると、「これは、もう会社で使えるのでは?」と思います。
そこで、一番大事なことを調べました。
このアプリに領収書を保存すれば、紙の領収書を捨てられるのか?
結論から言うと、そんなに簡単な話ではありませんでした。

ここで登場したのが、「電子帳簿保存法」です。
簡単に言えば、「領収書などを電子データで保存するためのルール」です。
私は「領収書を撮る→アプリへ送る→上司が承認→紙は捨てる」という美しい流れを想像していました。
ところが、写真を保存して承認履歴を残すだけでは足りません。
経費精算アプリを作ることと、紙の領収書を捨てられる法定保存の仕組みを運用することは、似ているようで別の競技でした。
「いつ保存したのか」「後から書き換えていないか」などを説明できる、本格的な保存の仕組みが必要でした。
調べる。
要件が出てくる。
さらに調べる。
また出てくる。
「まだあるの?」と思いました(笑)
画面上のエラーならAIに修正をお願いできます。
しかし、法律は修正依頼を受け付けてくれません。
「電子帳簿保存法を、もう少し初心者向けに変更してください」とお願いしても、何も起きません。
先ほどの働かないボタン以上に無反応です。

<もう少し詳しく知りたい方へ スキャナ保存で確認すべき主な論点>
※以下は要件の全てではありません。
・決められた期限内に保存すること
・訂正や削除の履歴を確認できること
・日付・金額・取引先などで検索できること
・領収書と会計帳簿を結び付けて確認できること
※実際の制度対応では、最新の国税庁資料や専門家への確認が必要です。
【大風呂敷を、そっと畳む】
ここまで作ったんだから、何とか使えないか。
正直、少し考えました。
でも、社員の情報や領収書を扱う以上、「たぶん大丈夫でしょう」で運用を始めるわけにはいきません。
必要な仕組みを追加できたとしても、その後の保守や法改正まで自社で背負うなら、費用対効果が良いとはいえません。
そこで、完成画面を前に、経理として冷静な判断をしました。
紙の領収書を捨てられる仕組みとしては、まだ使えない。
「作れた」と「会社で使える」は、同じ意味ではありませんでした。
経理として考えれば、正しい判断だと思います。
でも、土日まで使って作った本人としては、かなり悔しい。
しばらく完成画面を眺めました。
眺めても、電子帳簿保存法の要件は緩くなりませんでした。
経費の入力から申請・承認、CSV出力まで、機能としては完成。
それでも実用化はボツです。
完成品なのにお蔵入り。
経費精算アプリとしては、最初で最後に精算したい案件になりました。
今回、自分でやってみて、システム開発に携わる方々の大変さも、ほんの少しだけ分かりました。
今後「ここ、ちょっと直せませんか?」とお願いするときは、その「ちょっと」を一度飲み込んでから言おうと思います。
次に作るなら、「画面を作る前に必要な機能と運用条件を整理する」これが、今回のいちばん大きな学びです。
【結局、AIでアプリは作れるのか】
作れます。
今回、プログラミング経験がない私でも、経費の入力から申請・承認、CSV出力までできるアプリをAIと一緒に作ることができました。
ただし、会社で安全に使い続けるとなると、話は別です。
事前の設計、法令、セキュリティ、テスト、運用、保守……作り始める前に考えることが、想像以上にたくさんありました。
なお、顧問税理士へのお披露目会は、今のところ開催日未定です。
というより、こちらからこの話題を出していません(笑)。
普通なら、ここで懲りると思います。
「アプリ開発は大変だった。もう二度とやらない」
そう考えるのが正常な判断です。
ところが、しばらくすると、また新しいアイデアが浮かんできました。
「今度は、もう少しシンプルなアプリなら作れるんじゃないか?」
今回のアプリを作り始めたときも、似たようなことを考えていた気がします。
私は今回の失敗から、本当に学んだのでしょうか。
それとも、また新しい沼の入口に立っているのでしょうか。
その答えは、次回の「AIアプリ開発奮闘記」で(笑)

※電子帳簿保存法に関する内容は、記事作成時点の情報を基にしています。実際に制度対応を行う場合は、最新の法令・国税庁資料や専門家への確認が必要です。
※掲載している画面・開発痕跡の一部は、開発当時の状況をもとにAIで再現したイメージです。
記事担当:総務部 崎山
縁の下の力持ちとなる総務部では、従業員のサポート役として、採用から退職までの雇用管理や就業管理に加え、社員研修や福利厚生の充実など、働きやすい職場環境を目指しています。また管理業務としては備品調達や資産などの設備管理に加え、情報管理として社内ネットワークの維持管理、情報共有の推進なども行っております。そして企業活動にとって重要な管理業務である、経理、財務管理があります。金銭の入出金記録、計算業務に加え、決算処理や税務管理、そしてそれらを資料化し管理者、経営者への情報提供、資金繰りの立案から金融機関との調整業務など、経営の中枢機能としての業務を担っております。管理という社内向け業務のいっぽうで、電話対応、来客対応、会社の広報など、対外的には会社の顔としての役割もあります。 このように総務部では、従業員や他部門が円滑な活動を支援していく部分や、会社全体を管理していく組織の要としてのポジションなど、非常に多種多様な業務を行っております。そしてこれらをこなすのはヒトであり、ヒト同士のコミュニケーションが重要であると思います。社内、そして社外のお取引先様からも、頼られる存在、頼られる総務部でありたいと考えております。








